この作品は、恋が始まる瞬間を大げさに描かない。
文化祭も体育祭もないし、人生が変わるような事件も起きない。
その代わり、日常の中で少しずつ気持ちが積み重なっていく過程が、
とても丁寧で気づいたら引き込まれてしまった。
あらすじ
男子校の寮で暮らす彼女が欲しい樋口は毎回彼女に振られてばかり…
一方同室の日高は日々部活に打ち込んでいる好青年。
軽い相談はするもののただのシェアメイトの関係だった二人だが、日高の後輩の可愛い男子が現れ、樋口と日高の関係は、少しずつこれまでとは違う形へと動き始める。
本作はこの二人の物語を軸に、
めんどくさがり×御坊ちゃま、
寮生×寮監 ―― 個性の違うカップルを描いた、全3ストーリー構成。
感想
この作品は、同じ世界線で描かれる3カップルの恋を1冊にまとめた短編集。
一見すると「話が短くて薄い?」と思うかもしれないけど、どのカップルも恋の始まり方や関係性が違っていて、読んでいて全然飽きない。
中でも日高✖樋口のエピソードは、派手さはないけど、等身大の学生生活の中で生まれる小さな恋心が印象的だった。
ということで、特に日高✖樋口のお話で惹かれたポイント2つ!
大きなイベントに頼らず、日常だけで育っていく恋愛
この作品には、文化祭や体育祭、いじめや家庭問題みたいな大きなトピックがない。
恋のきっかけも、何か特別なイベントが起こるわけじゃない。
ただ同じ寮の部屋で生活して、何気ない会話や小さなやりとりを重ねていく中で、
気づいたら好きになっていた──そんな始まり方。
学校では、樋口は「彼女ほし〜」と放課後にだべっているタイプ。
一方の日高は、恋愛よりも部活に打ち込んでいるタイプ。
だからいつも一緒なわけでもなく、関係としてはただの寮のシェアメイト。
別に仲が悪いわけじゃないけど、特別仲がいいわけでもない。
同室だからといって過剰に干渉することもない。
服装がかっこいいかどうか、みたいな軽い相談をするくらい。
だから普段何をしているか、部屋の外の生活までは深く知らない。
正直、寮生活ってこのくらいの距離感が一番多いと思う。(経験談)
無理に仲良くなろうともしない。
でも嫌な思いはしないように気を使う。
この二人は本当にそんな関係性で、
寮の部屋で悩みとかも特になく「今日も静かだなぁ」って思う
まじで学生特有の空気感がそのまま描かれている。
でも同じ部屋で生活しているからこそ、
学校では見えない一面や、些細な行動、言葉が少しずつ目に入ってくる。
その積み重ねで、気づかないうちに相手への印象が変わっていく──
このチリツモ感と時間の流れを、簡潔なストーリーの中でしっかり感じられた。
物語が進んでも、急展開や派手な出来事は起きない。
日常の中に小さな悩ましい出来事がひとつ増えるだけ。
だからこそリアリティーがあって、きゅんとしながらも、心穏やかに読み進められる。
その穏やかな日常の中で起きる小さな変化が、個人的には最高に刺さった。
関係を壊さず、少しずつ形を変えていく二人の距離
日高はいわゆるバリバリの好青年タイプ。
浮気とは無縁で、一度好きになったら一途な人間。
一方の樋口は、周囲から見ると
彼女を取っかえ引っ変えしているように見えるタイプだ。
一見真逆に見える二人だけど、
実は「取っかえ引っ変えタイプ」にはいくつか種類があると思っていて、
• 本当に遊び人なタイプ
• 本当は一途なのに誤解されやすいタイプ
• 過去の経験から本気の恋を避けているタイプ
樋口は明らかに2番目。
寮の部屋で彼女への本気の気持ちをこぼす姿。
振られたときの自分への印象に対する不満。
こっから樋口は恋愛を軽く扱う人間じゃないってのがめちゃめちゃ伝わってくるんよ。
そんでその人間性を、日高はずっと近くで見てきた。
だからこそ、日高は樋口を好きになっていく。
そして、その想いを向けられた樋口は悩む。
でもその悩み方が、この作品の一番好きなところだった。
・かわいい後輩に告白されたとき:
樋口が悩んでいたのは
「男と付き合えるか」という大きな括り。
・日高に告白されたとき:
樋口が悩んだのは
「日高と恋人になる」という、たった一人の存在だった。
すぐに否定しない。
逃げるほど真剣に考える。
それだけで、もう気持ちは十分伝わってくる。
今までただのシェアメイトだった二人が、
相手の知らなかった一面を共有して、
距離を壊さないままゆっくり関係を進めていく。
告白も、恋人になる過程も盛大じゃない。
でもお互いをちゃんと好きで、
ちゃんと向き合って進んでいく。
一途同士だからこそ成立する、静かで誠実な恋愛だった。
| 総合おすすめ度 | ❤️❤️❤️❤️♡ |
| BL初心者向け | ❤️❤️❤️❤️❤️ |
| キュン度 | ❤️❤️❤️♡♡ |
| 穏やか度 | ❤️❤️❤️❤️❤️ |
| ストーリー重視度 | ❤️❤️❤️❤️♡ |
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最後に
心臓が痛くなるほどドキドキするわけでも、
胸が締めつけられるほど切ないわけでもない。
でも、読み終わったあと、少しだけ気持ちがやさしくなる。
この二人の恋は、きっとそういう場所にある。

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